2.委託手数料
前回「1.証券会社の中の人々」に引き続き、本ネタ。
証券会社の収益源は手数料だが、委託手数料は減少し続けているというお話。
日本証券業協会が公表しているデータを「FACTBOOK2015」から頂いてグラフにしてみた。
受入手数料=委託手数料+引受け・売出し手数料+募集・売出しの取扱手数料+その他の受入手数料
収益合計=受入手数料+トレーディング損益+金融収益
確かに、収益合計に占める、委託手数料の割合は総じて減少している。
次に、年間売買代金と委託手数料の関係。
確かに、アベノミクスにより2014年の売買代金は2008年の売買代金よりも少し高いところまで回復したものの、委託手数料の回復はそれに及ばない。
手数料率が低下しているので、委託手数料の大幅な伸びは期待できないとの見込みは正しそう。
収益基盤である委託手数料が縮小した理由は、委託手数料自由化が原因とのこと。
【日本版ビックバン(1998)】
・証券会社の免許制から登録制への移行
・株式売買取引の取引所集中義務の撤廃
・株式委託売買手数料の自由化
— マクロ経済学bot (@macro_memo_econ) 2015, 10月 25
電子取引で発注が機動的になったため、売買量が爆発的に増えても、手数料が伸びない。
総合証券の支店営業が真のターゲットとしているのは富裕層顧客なので、リテールに関しては電子取引の影響は少ないだろう。一方、機関投資家の場合、電子取引で発注を出すため、電子取引の影響が大きいというわけか。
ネット証券の場合は、言わずもがな、富裕層顧客を対象としていない(少なくとも総合証券と比較して出遅れているだろう)ため、格安手数料によりシェアを伸ばした。
さらに、機関投資家向け手数料低下のもう1つの要因が、手数料自由化と同時期に始まった取引所集中義務廃止にあるとのこと(1998年12月に廃止)。
取引所へ取り次ぐ業務が無くなり、委託手数料が無くなってしまったということか。
◎取引所へ取次
顧客(売手)→証券会社(買手)→取引所(約定)※)証券会社が顧客からの売り注文を取引所へ取り次ぐため、証券会社は顧客から委託手数料を受け取る
◎相対取引
顧客(売手)→証券会社(買手)
委託手数料が無くなってしまったため、代わりに、トレーダーが顧客の売り注文に対してどこまで高いビッドを出せるかで、トレーディング収益を得られるかが決まるらしい。